近年ではヒップホップのMCバトル(ラップバトル)の人気が高くなってきており、小規模〜大規模まで毎週のように各地でMCバトルの大会やイベントが開催されていますよね。
今回は、最近MCバトルを知って興味が出てきたという人や、なんとなくMCバトルを知っているけど細かいルールやよくわからない言葉があるという人に向けて、MCバトルのルールやよく使われる用語などを徹底解説していきます。
MCバトルに関する内容を網羅的に解説しましたので、目次から気になる項目を読んでみてください。
MCバトルとは
MCバトルはヒップホップ文化の一つで、ラッパー同士がビートに乗りながら自分のリリックや言葉を使ってスキルを競い合う勝負です。
基本的には相手をディスり合う戦いが中心ですが、バトラー同士の関係性や相性によってはリスペクトを込めて相手を讃えたり、会場を盛り上げて競うようなバトルになることもあります。
最近ではヒップホップのラッパーだけでなく、レゲエのアーティスト(DeeJay)やお笑い芸人、格闘家、テレビタレントなど、賛否はありますが様々なジャンルのアーティストがMCバトルに出場し、盛り上がりを見せています。
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MCバトルのルール
MCバトルの大会は基本的にトーナメント方式が中心ですが、大会やイベントによってはリーグ戦やマッチメイク方式の大会もあります。
ルールも大会やイベントによっても多少変わりますが、基本的に以下のような流れ。
まずは先攻か後攻を決めます。
- ジャンケンで勝った方が先攻か後攻かを選んで決める方法が最も多いです。
- 大会やイベントによっては、くじ引きやコインの表裏で決めることもあります。
次にバトルで使われるビートと小節(8小節 or 16小節)を決めます。
- MCバトルではバックDJからビートが流され、ビートはバトルごとに変わります。
- ビートにはバックDJが作ったオリジナルビートや有名な曲のビートまで様々な種類が存在します。
- バトルするラッパー同士の組み合わせや状況に応じて、ビートが選曲されます。
- バックDJは複数人いることもあり、交代でビートを流します。
1、2回戦などではビートと小節数は固定で決まっており選べない場合が多いですが、準決勝や決勝戦のバトルでは複数の選択肢から選べる場合があります。
基本的に先攻のMCにビートと小節を選べる権利が与えられます。(後攻が有利なため)
小節の選択肢は主に、8小節の4ターン勝負 or 16小節の2ターン勝負の2種類が中心。
また、1、2回戦では8小節3ターン勝負の固定が多いです。
先攻・後攻とバトルで使うビート・小節が決まったら、バトルを開始します。
司会のバトル開始の合図でバックDJからビートが流されるので、交互にラップやフロウを披露し相手をディスり合います。
バトルが終わったら、勝敗を決めます。
勝敗の決め方(ジャッジ方法)は主に、
- オーディエンス(観客)の歓声による判定方式
- 複数の審査員による判定方式
の2種類があり大会やイベントによって異なります。(2つ組み合わせた方式もある。)
勝敗は様々な要因によって判定されます。(後述)
後攻が圧倒的に有利?
MCバトルでは基本的に後攻が有利と言われています。
- アンサーを返せる
- ラストバースで締められる
バトルの内容にもよりますが、基本的に1ターン目では先攻の言葉に対して後攻がアンサーを返すことができ、先攻は2ターン目から後攻の言葉にアンサーを返せるようになります。つまり2ターンのバトルでは先攻は1回しかアンサーを返せないんです。
また、後攻のラストターンはオーディエンス(お客さん)の耳に強く残りやすいので、最後のバースで上手く締めることができれば1、2ターン目の内容が多少弱くても勝つことが多いです。特に16小節のバトルでは1ターンの時間が長くなるので、さらに印象が強くなります。
なので後攻が有利な傾向にあるのは間違いないです。
しかし、だからこそジャンケンに勝って先攻を選ぶのは男気があってカッコいいんです。
先攻にもメリットはある!
後攻が有利と前述しましたが、先攻にもメリットがあります。
- 空気を作れる
- ネタや仕込みを使える
- 得意なビートや小節を選べる
先攻では自分から言葉を伝えることができるので、相手に対してずっと思っていたことや言いたかったことを1発目に言うことができます。相手はその言葉に対してアンサーをする流れになり、バトルの雰囲気や方向性を自分から作れるようになります。
また、先攻の1ターン目では相手へのアンサーがないので、自分の仕込んできたネタやセルフサンプリング(持ち歌)を自由に使うことができます。1ターン目で上手く盛り上げることができれば、その後のターンでも会場の空気を味方につけることができます。
また、先攻がビートと小節を選べるバトルの場合、自分の得意なビートと小節を選べます。
ビート選びはかなり重要!
MCバトルではビートの種類によって、バトルの印象や内容も大きく変わります。
ビートによってBPM(テンポ)の速さや雰囲気、明るさ、ジャンルなども全然違うので、ラッパーによって得意・不得意が分かれることもあり、ビートとの相性次第でMCのパフォーマンスも大きく変わる場合もあります。
ビートがバトルの勝敗を分ける要因にもなり得るので、即興や押韻だけでなくどんなビートにも対応できるスキルもMCバトルでは重要なスキルになります。
関連:MCバトルでよく流れる有名な定番ビート!かっこいい音源からおすすめの人気曲まで紹介
バンド演奏でのバトル
MCバトルの大会やイベントによっては、流されるビートがバックDJではなくバンド演奏のバトルもあります。
バンド演奏でのバトルの場合、バトル中にバンドを操って演奏に変化をつけることができます。
バンド操作によってリズムにメリハリをつけたり、グルーヴ感を強調したり、言葉を伝えやすくするなど、様々な戦い方ができるようになり、より高い音楽性を表現することができます。
バンド操作については下記で詳しく解説しました。
小節数とターン数
MCバトルでは、事前に小節数とターン数がルールとして決められます。
ルールは大会やイベントによって異なります。
・一般的に最も多いのは8小節×3ターン
・準決勝や決勝になると、8小節×4ターン or 16小節×2ターンのどちらかを選べる場合が多い
・地方予選などの小規模な大会では、8小節×2ターンなどの短いバトルもある
8小節×4ターン or 16小節×2ターンが選べるバトルの場合、先攻のMCに選択権があります。
レゲエルールとは?
MCバトルの特殊なルールとして、レゲエルールがあります。
レゲエルールでは、通常のルールのように「○小節×○ターン」というバトルではなく、「1分×2ターン」というバトルになり、1分間という長いターンの中で自由にバースを披露します。
レゲエのDeeJayクラッシュに寄せたルールとなっており、バンド操作の自由度も広がるので、より高い音楽性やライブ力が求められるルールです。
勝敗のジャッジ方法
勝敗のジャッジ方法は大会やイベントによって異なりますが、
以下の2種類が主流です。(2つを組み合わせた方式もあります。)
- オーディエンス(観客)の歓声による判定方式
- 複数の審査員による判定方式
- オーディエンス(観客)の歓声による判定方式
-
オーディエンスの歓声による判定方式では、
バトル終了後に司会がMCの名前を挙げるので、勝ったと思った方にお客さんが声を上げます。声が大きかったMCの勝利となり、同じくらいの場合は延長になることもあります。
一般的なMCバトルの大会ではこちらのジャッジ方式が使われることが多いです。
- 複数の審査員による判定方式
-
審査員による判定方式では、
複数(主に5人)の審査員がバトルを審査し、勝ったと思った方に札を挙げます。札の数が多いMCが勝利となりますが、延長の札も含まれていることもあります。(大会やイベントによります。)
勝敗の判断基準は決まっていない
勝敗を決めるにあたり、
明確な判断基準は特に決まっていません。
- 押韻のうまさ
- フローのうまさ
- 即興性・アンサーのうまさ
- パンチライン
- 会場の盛り上がり
- プロップス(人気)
など様々な要因により、どっちが勝ったかを個人がそれぞれ判断し、
その日の会場の空気などによっても勝敗が左右されることもあります。
ボディタッチは禁止?
MCバトルの大会やイベントにもよりますが、基本的にバトル中の相手へのボディタッチは禁止です。ルールとしてはっきりと明記されているわけではないので「失格」ということになるわけではありませんが、一応マナーとしてボディタッチは禁止である傾向にあります。
ただし、バトルで対峙するMC同士の関係性やバトルの内容、流れによっては、肩を軽く叩いたり、肩を組んだりするようなことも過去にはありました。
「THE罵倒」というMCバトルのように、”ある程度のボディタッチはあり”というルールの大会もあります。
ライム読みとは
MCバトルでは、たまに「ライム読み」というスキルが使われます。
ライム読みとは、相手のバース中に相手が踏む韻を読んで、被せて同時に言うことです。これにより相手や観客に「その程度の韻は簡単に思いつくよ」というメッセージを伝えることができます。
MCバトルでは、基本的に相手のバース中に話すのはNGですが、ライム読みをすることでオーディエンス(観客)を盛り上げることができ、相手にもダメージを与えることができます。
ただしライム読みを間違えるとかなりダサいですし、大きな減点ポイントになるのでリスクは高いです。
また、最近ではわざと有名なリリックやサンプリングを使うことで観客にも言葉を上げさせ、会場を盛り上げるということもあります。
賞金やギャラはいくら?
MCバトルの大会では基本的に優勝者には賞金が与えられ、
金額は大会やイベントの規模によって数万円〜数百万円まで様々です。
また、大会やイベントにもよりますが、
優勝賞金以外にもバトル出場者にはギャラが支払われます。
ギャラの金額はMCの知名度や人気、大会によっても異なり、詳しい金額は不明です。
関連:ラッパーの収入源はどこから?HIPHOPアーティストの年収と稼ぎ方の仕組みを解説
ネタやサンプリングはあり?
MCバトルは基本的に、相手の言った言葉に対して即興でアンサーを返すというのが本来のスタイル。
即興に対して、事前に考えてきた言葉のラインやバースをネタと呼びます。
また、すでに存在する曲のバースを歌うことをサンプリングと呼びます。(自分の曲を歌うことをセルフサンプリングと呼ぶ)
ネタやサンプリングについては個人のラッパーやヘッズ(ヒップホップが好きな人)によっても賛否が分かれ、即興との境界線もわかりずらいので、アリかナシかは完全に個人の好みでしょう。
また、レゲエDeeJayが使うようなクオリティの高いネタ(仕込み)やセルフサンプリングであれば、ネタとわかっていても観客は盛り上がります。しかしアンサーを返さずにずっとネタを歌っているだけでは観客も冷めてしまいますし、それでは勝てません。
結局はネタであろうと即興であろうとそのクオリティが重要です。
プロップスとは?
MCバトルにおいてプロップスとは、簡単にいうと「人気」のこと。
これまでMCが積み重ねてきた期待値や支持でもあります。
MCバトルではこのプロップスがかなり重要です。
誰もが知っているプロップスの高いMCと、プロップスが低い無名のMCがバトルをした場合、バトルの内容的には引き分けくらいだとしても、プロップスが高いMCが確実に勝利します。引き分けどころか、内容的には明らかに負けていたとしてもプロップスだけで勝つ場合もあります。
やはり自分が好きなMCに手を挙げたくなりますよね。
少し不公平ではないかと感じる人もいるかもしれませんが、
プロップスは間違いなく本人の実力です。
プロップスは誰もが生まれつき持っているものではないですし、そのMCが積み重ねてきた努力によって身につけたものです。プロップスが無いことによって負けたMCも、努力して続けていればプロップスが上がってくるだろうし、そもそもプロップスだけで勝敗が決まるものでもありません。
また、あまりにプロップス勝ちが多く続いていたりするとプロップスは下がり、次のバトルでは勝ちにくくなったりと、いつまでもプロップスだけで勝ち続けられるわけでもありません。
主要大会とオーガナイザー
MCバトルの主要大会とオーガナイザー(主催者)は以下の通りです。
バトルイベント名 | オーガナイザー | 特徴 |
---|---|---|
KING OF KINGS | 漢 a.k.a GAMI (9SARI GROUP) | ・都道府県予選からの勝ち上がりや、 様々な大会の優勝者のみによる大会 |
戦極 MC BATTLE | MC正社員 | ・芸人やアイドルなど様々なMCが参加 ・より一般の層にも届くように注力 |
凱旋 MC BATTLE | 怨念JAP | ・アリーナでのデカ箱やツアーなど、 新しいことに挑戦 |
真ADRENALINE | ACE、HIDE | ・DJではなく生バンド ・バンド操作も可能で音楽性も重視 |
SPOTLIGHT | 韻踏合組合 | ・関西で開催、観客がステージの周りを囲む ・アカペラルールがある |
口喧嘩祭 | 梵頭 (HIKIGANE SOUND) | ・その場でクジ引き形式で対戦相手を決める |
他にも様々なバトルイベントや大会があり、特色が異なります。
各イベントの特徴や詳細は下記で解説しました。
【FSL】ラップバトルがプロリーグ化
FSL(フリースタイルリーグ)とは、フリースタイルラップバトル(MCバトル)のプロリーグ化することを実現するために2022年に新しく立ち上げられたプロジェクトです。
近年のMCバトル人気が大きく高まってきていることもあり、これからはヒップホップの音源やライブだけでなく、MCバトルだけでも稼いで食っていけるような時代になるかもしれないですね。
FSLには通常のバトルイベントとは違うおもしろい特徴やルールがあります。
- マッチメイク方式
- アプリ投票
- ランキング制度
- 賞金制度
- チャンピオンシップ大会
- FSLトライアウト
- BeeBetで勝敗に賭けられる
以上のような様々な特徴があります。
詳細は下記で解説しました。
BeeBetでお金を賭けられる!
MCバトルの大会やイベントによっては、
BeeBetというオンラインカジノで勝敗にお金を賭けられる場合があります。
過去に実際に賭けることができたイベント
- KOK (KING OF KINGS)
- FSL (Free Style League)
- BATTLE SUMMIT
MCバトルやラッパーに詳しい人であれば、対戦の組み合わせや過去の戦績などによって、どっちが勝つのか考察・分析することで、どっちが勝つのか予想がしやすいでしょう。自分の好きなラッパーや勝つと思うMCに自賭けることで、MCバトル観戦を楽しみながらついでにお金も稼ぐことができるようになります。
MCバトル人気は年々高まってきているので、今後さらに様々なMCバトルのイベントがBeeBetでの賭けの対象になると予想されます。ぜひBeeBetへ登録して遊んでみてください。
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BeeBetについての詳細は下記で解説しました。
レゲエのDeeJayクラッシュとの違い
レゲエでは、DeeJayクラッシュと呼ばれるバトルのようなイベントがあります。
ヒップホップのMCバトルとの違いは細かくは色々ありますが、まず小節(8小節、16小節のような)やターン数が決まっておらず、攻撃の交代はその場の雰囲気や空気感で行われます。(時間制である場合が多い)
また、MCバトルでは即興がベースですが、DeeJayクラッシュでは自分の持ち歌をカスタマイズして使ったり、仕込みのバース(弾と呼ばれたり、ヒップホップではネタと呼ばれるもの)を中心に攻めます。もちろん即興もあり。バックバンドやDJを自由に操りながら音楽にメリハリやグルーヴ感を強調して戦うので、MCバトルよりも音楽性が重視されます。
- マッチメイクが基本
- 試合前からバチバチ
- 小節やターン数の縛りがない
- 持ち歌、仕込みがベース
- バンド操作が自由
- 勝敗はつけない
DeeJayクラッシュの特徴やルールについては下記で詳しく解説しました。
MCバトルはどこで見れる?
MCバトルを見る方法は主に以下の通り。
- Youtubeで見る
- ABEMAで見る
- DVDで見る
Youtubeでは、各イベントのオーガナイザーがそれぞれYoutubeチャンネルを持っており、大会の終了後にベストバウトが数日おきにYoutubeにアップされていきます。Youtubeでは基本的に全ての動画はアップされないので、全ての動画を見たい場合はABEMAやDVDで見る必要があります。
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動画配信サービスのABEMAプレミアムでは、MCバトルの大会やイベントにもよりますが、MCバトルの生配信や過去に配信された動画が見放題です。
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ABEMAで配信中のMCバトルは下記でまとめています。
DVDでしか見れないバトルもある?
最近はYoutubeやABEMAでも便利にMCバトルが見れるようになりましたが、昔のバトルや一部の大会はDVDでしか見れないものもあります。
MCバトルを最近見始めた人はYoutubeやABEMAでしか見たことがない人も多いかと思いますが、DVDでしか見れない熱いバトルも多数存在しますので、ぜひチェックしてみてください。
DVDで見れるバトルは下記でまとめています。
まとめ
今回は、MCバトルのルールや関連する様々な項目を解説しました。
ルールや用語を正しく理解することで、MCバトル観戦がさらにおもしろくなります。
最近では本当にMCバトルの人気がすごいですね。賛否はありますがヒップホップのラッパー以外のアーティストやMCも出場するようになり、ヒップホップの枠からはみ出した層にも人気が出てきました。それによって今までヒップホップに興味がなかった人もヒップホップにハマるようになり、ヒップホップがより広まればそれは良いことではないでしょうか。
これからMCバトルがどのような方向に進化していくのかわかりませんが、さらに盛り上がっていくことは間違いないので楽しみですね。
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